Now Loading...

里山社の本

ペンと剣 増補新版

エドワード・W・サイード 著、デーヴィッド・バーサミアン 聞き手、中野真紀子 訳

パレスチナの闘う知識人・サイードの入門書を復刊。和解と共生をあきらめない思想をわかりやすい言葉で伝える名インタビュー集。

分断が進む世界への絶望に抗うために
広い視野で希望を見出すサイードの思想

西洋中心の価値観に異議を唱え、アカデミズムの枠を越えて政治に声を上げた人物像を浮かび上がらせる、サイードをこれから読む人にも最適な一冊。西洋の視点を通して表象されたアラブ・イスラム世界のステレオタイプを、西洋が支配に利用してきたことを論じ、権力と知識の関係を問い直す古典的名著『オリエンタリズム』。西洋の文化や文学が植民地支配や帝国主義と深く結びつき、権力構造に奉仕してきたことを分析する『文化と帝国主義』。自著をわかりやすい言葉で語り、パレスチナ問題に通ずる世界の構造を広い視野で捉え「和解と共生」への道を示すインタヴュー集。

「パレスチナという理念は、他者との共生、他者の尊重、パレスチナ人とイスラエル人とが互いに相手を認めるという理念である」


◉目次
復刊によせて
序文 イクバール・アフマド
第1章 パレスチナ人の祖国追放をめぐる政治と文化
第2章 オリエンタリズム再訪
第3章 ペンと剣│文化と帝国主義
第4章 イスラエルとPLOの合意│批判的評価
第5章 パレスチナ│歴史への裏切り
謝辞 デーヴィッド・バーサミアン
2010年版序文 ヌバール・ホヴセピアン
エドワード・W・サイード略歴
文庫版・訳者あとがき
増補新版・訳者あとがき
索引 

著者について

エドワード・W・サイード◉1935年イギリス委任統治下のエルサレムに生まれ、エジプト・カイロの英国系学校に通う。1951年に渡米しアメリカで高等教育を受ける。プリンストン大学、ハーヴァード大学で学位を取得。コロンビア大学で英文学・比較文学を教える。『オリエンタリズム』『知識人とは何か』(ともに平凡社)、『文化と帝国主義』(みすず書房)などのポスト・コロニアル研究における画期的書物を記す。1967年第3次中東戦争を機にパレスチナ解放運動の理念に共鳴し、1977年からPNC(パレスチナ民族評議会)のメンバーとなり米国との和平提案を仲介するなど、対話による解決に向けて尽力。『パレスチナ問題』『イスラム報道』(みすず書房)などのパレスチナ問題に関する書籍も多数執筆。だが次第にPLO主流派とは隔たりが広がり、91年に白血病の診断を受けたことを機にPNCを辞任。93年のオスロ合意には警鐘を鳴らし解放運動の中では孤立したが、死の直前まで精力的な政治批判をつづけた。03年死去。

デーヴィッド・バーサミアン◉1945 年ニューヨーク生まれ。両親はアルメニア人でトルコにおける大虐殺(1915 年)を逃れてアメリカに渡った。コロラド州ボールダー市を拠点としたコミュニティー放送局の活動に携わり、アメリカの主流メディアが取り上げない体制批判の声をとどける番組「オルターナティブ・ラジオ」を1986 年後半に創始し、現在も活動を続けている。ノーム・チョムスキーとの数知れぬ対談が有名だが、その他にもエドワード・サイード、ハワード・ジン、タリク・アリ、アルンダティ・ロイ、ラルフ・ネーダーなど数多くのプログレッシヴな論客との対談を重ね、それに基づく書籍も多数刊行している。独立メディアの世界に大きな足跡を残し、多数の賞を受賞している。

中野 真紀子◉翻訳者。『ペンと剣』をきっかけに、サイードやパレスチナに関連する書籍や映像の翻訳を多数行っている。最新訳書はアーティフ・アブー・サイフ著『ガザ日記:ジェノサイドの記録』(地平社)。他の分野では、ノーム・チョムスキー/エドワード・ハーマン共著『マニュファクチャリング・コンセント――マスメディアの政治経済学』(トランスビュー)、ナオミ・クライン著『地球が燃えている――気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言』(共訳、大月書店)など。独立メディア系の活動では、ニューヨーク発の非営利メディア Democracy Now!の日本語版を提供する「デモクラシー・ナウ!ジャパン」の代表を務める。

関連する本

ペンと剣  増補新版

ペンと剣 増補新版

エドワード・W・サイード 著、デーヴィッド・バーサミアン 聞き手、中野真紀子 訳

装丁:服部一成デザイン事務所

2025年12月10日・刊
定価:2,300円+税
320ページ
ISBN: 978-4-907497-24-8
並製本
装画 前田ひさえ